pay forward [ことば]
やさしくなくなっていると、自分自身を責めている。
体の右半分は、おもしろくもないのに笑えるか、と思ったり、
左半分は世間様がホッと笑うなら笑っておけ、と思ったりしている。
といって、相談しているわけじゃないんです。
この年になって青臭いこと考えているだけでもどうかしているのに、
世間様に裁いてもらおうなんてもったいない話です。
めそめそ書いているのは、疲れているかららしい。
pay forward という言葉を最初に聞いたのは、小児疾患の講義であったかもしれない。
小児科医は、全体に少ないといわれている。
このことは、ドキュメンタリーやノンフィクションまたはフィクションなどの題材では、
すっかりおなじみといえよう。
なので、たいていの看護学校は小児科を教える講師の不足に困っている。
困っているが、なんとか引き受けてくれる講師を見つけてくる。
看護学校にとって小児科の講師は得難いものである証左に、当時われらに、講師に対して
「こうせよ」とか、「こうはならぬ」といった特別な注意付けをくどいほどしてくるので、閉口した。
講師は来た。
クリスチャンであった。
仕事に並行して、なにやら敬虔で活気あふれる活動をしていて、大変忙しい人物であった。
忙しいのに講師を引き受けたのは、われわれに伝えたいことがあるからだったと自ら言った。
それがpay forwardだった。
そういえば、学生だった同期が、この講師のことをやたらとぼやいていたなあ…
「テストに出ることだけ言えばいいねん。肝心なことを言わんのやったら来んでええねん」
…まあ、その気持ちもわからなくもないけど。
いま、この話題を書きながら、件の講師がpay forwardを説明しづらそうに、
懸命に話していたことを思い出す。これ、説明するのむずかしいね。
まず、「ペイ・フォワード」という映画があったことから。
邦題は、『ペイ・フォワード 可能の王国』。
原題は、『Pay It Forward』 という。
オフィシャル・サイト(英語)→
物語では、少年が「親切にされたら、三人の人に親切にしましょう」と、提唱していた。
ねずみ講の無限連鎖は必ず破綻しますが、親切の無限連鎖は破綻しないですね。
さて、辞書で調べると、pay forward というは造語であるため、辞書にない。
しかしながら、造語ではないとも聞いたので紀伊国屋の辞書売り場へ行って探してみた。
残念なことに、見つけることができなかった。
pay back の変形語かもしれない。
pay back とは、以下の意味である。
1 借金を返すこと。返済すること。また、払い戻し。
2 人の親切に報いること。人に応分のお返しをすること。
なんだか、こんがらがります。
自分の考えに近いのだろうか、払い戻しという文字が目にとまった。
わたしはpay forward を、人の親切を払い戻すということ、と思っているかもしれない。
あるいは、pay forward は先払い、という意味になるのかな。
辞書からでは、よくわからない。
映画を見なければわからないのかな…と思ったり
返すということではあるまいか。
講師はpay forward を繰り返しながら、これから学ぶことを次へ渡せと言っていた。
学習した内容を申し送れということではない。
教えること手伝うことといった行為そのものを、あなたの手から、次へつないでゆけと言った。
恩送りのことである。
恩送りは、検索してもらった方が質の高い解説にふれられるだろう。
恩送り - Google 検索→
恩返しは、育てて下さった方々や、助けて下さった方々へ、同じだけ返そうとすることである。
恩返しはいらない。
自分自身の狭量さに打ちのめされる思いだ。
いまだ自分は、笑顔くらいなんだ、と言えない。
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